ぼくとう通信句会 2025-8

◇山本 雅子

銀河濃し島にルルドの泉湧く

手のひらに鬼灯ひとつ母想ふ

菊膾たたす二杯酢坊泊り

爽やかや新弟子仰ぐ大銀杏

畔川に日がな音たて芋水車

◇恩田 洋子

ほほづきの半分青き鉢まはす

村祭二つ返事に役受くる

幼子の和毛吹かるる今朝の秋

大まかになりし家計簿赤のまま

秋風や憂鬱隠す紅引きて

◇林 勝利

青鬼灯幼返りの玉手箱

包み美し思ひ出零る紅鬼灯

鬼灯や入るも出づるも二天門

命二つこれが縁やゐのこづち

秋興の谷中巡りや食べ歩き

◇岸本 圭舟

プランターの鬼灯色ふ抜小路

おくびしてぷつと西瓜の種二つ

推薦人の二十は遠し竜淵に

西郷どんのごつき目ん玉晩夏光

蝉しぐれ残る時間を数ふべく

◇伊藤 邦江

鬼灯や母の機嫌を損ねたる

言ひ訳の二転三転稲光

さらさらと田川煌めく曼珠沙華

細波を入江に浮かべ盆の月

流星や黒々浮かぶ し尾の影

◇木村 晶子

鬼灯の破れてくやむ涙顔

夏休み覚え始めの二二んが四

シャシヤシヤ氷切る音愉しめり

母の堀りし防空壕の露けしや

下駄けつて天気占ふ浴衣の子

◇萩庭一幹

蝉しぐれ放送発信基地の丘

炎天を二羽の雀の跳ね飛びぬ

鬼灯の涸るるにまかせ牧水忌

透きとほる風に吹かるる黄菅かな

船波に芥漂ふ晩夏かな